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レントゲン検査と被ばくについて

[2024.08.21]

こんにちは。

院長の高田です。

今回は単純X線検査(以下、レントゲン検査とします)の役割と、その被ばくについてお話しします。

 

長文になりますので、要点を先にお伝えします。

 

  1. わたしたちは、実は日常生活でも放射線を浴びていますが、健康への影響はありません 
  2. レントゲン検査による被ばくは、自然放射線による被ばくに比べて多いわけではなく、健康への影響はほとんどないといえます
  3. 当クリニックでは、被ばくを最小限にするために多くの工夫をしています
  4. 当クリニックではレントゲン検査の役割・メリット・デメリットを考慮して、レントゲン検査をご提案しています

 

もっと詳しく知りたい方は、是非本文をお読みください。

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レントゲン検査は病院やクリニックで行われる最も一般的な検査です。

当クリニックでも初診の患者さんはほとんどの方にレントゲン検査を行います。ただ、放射線被ばくをすることから、検査を受けることを不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。

今回はその不安を解消するために、被ばく量やその影響、そしてレントゲン検査の必要性についてわかりやすく説明します。

 

  1. 「レントゲン検査とは?」 知っておきたい基礎知識

    レントゲン検査は、病院やクリニックで体の中の状態を確認するために使われるとても重要かつ簡便な検査の一つです。この検査では「X線」という特殊な光を使いますが、この光は普通の目では見えないため、私たちが普段見ている光とは少し違います。

    X線の歴史と役割

    X線は1895年、ドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲン博士によって発見されました。レントゲン博士は、実験中に特殊な光が発生することに気付き、その光が物を通り抜ける性質を持っていることを発見しました。この功績により6年後にノーベル物理学賞を受賞しました。これがX線の始まりです。

    レントゲン博士は、この光が未知のものであったため「X線」と名付けました。X線の「X」は、数学で未知数を表す記号から来ています。

    X線は医療の分野だけでなく、工業の分野においても非常に重要な役割を果たしており、身近なところでは空港での保安検査などでも使われています。

    前回のブログでもご説明しましたが、レントゲン検査は骨の観察に向いています。そのため私たち整形外科では、骨が折れていないか、関節の変形がないか、骨折の治癒は順調か、など多くのことを確認するためにレントゲン検査を使います。

    X線を使うと、体の中の様子がまるで影絵のように映し出され、それを写真のように記録することができます。この写真は「レントゲン写真」と呼ばれ、病気やケガの診断に役立ちます。

    X線の仕組み

    X線は、通常の光よりもエネルギーが高いため、体の中を通り抜けることができます。体を通り抜ける際に、骨や臓器などがX線の一部を吸収し、残りのX線が体を抜けていきます。この通り抜けたX線がフィルムやデジタルセンサーに当たることで、レントゲン写真が作られます。骨は、X線を多く吸収するため、写真では白く映ります。一方、筋肉や臓器はX線をあまり吸収しないため、黒や灰色に映ります。

     
  2. 「被ばくって怖いんじゃないの?」

    「被ばくってなんだかこわいな」、というイメージを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

    放射線に対する不安を持つことは自然なことですが、正しい知識を持つことでその不安を軽減することができます。レントゲン検査による放射線は、日常生活で受ける放射線と比べても少量であり、健康への影響はほとんどありません。正しい情報を持ち、適切な検査を受け、健康な生活を送りましょう。

    それでは放射線の被ばくによる私たちの体への影響について考えてみましょう。

    下の図のように、放射線による人体への健康影響には様々なものがあります。 

    上の確定的影響は一定以上の被ばくをしない限り発生することはなく、大きな事故などがない限り、放射線に関係する仕事や生活をしていなければ発生する可能性は低いです。

    そのため、ここでは下の確率的影響のガンについて解説をしていきます。なお、白血病も血液のガンとします。

    被ばくとガンの関係

    被ばくをすると、放射線は体の中の細胞に当たり、細胞の中にある遺伝子の本体であるDNAに傷をつけることがあります。ちなみにDNAを傷つける原因は、放射線だけではなく、食物の中の発がん物質、喫煙、環境中の化学物質、活性酸素など様々にあります。

    DNAが受けたこの傷は、少しの傷であれば修復されます。しかし、完全に修復ができないこともありますし、細胞自体が死んでしまうこともあります。

    修復が不完全な細胞が、突然変異を起こし、ガンや遺伝性の障害などの確率的影響を生じる可能性があります。

    このため、放射線に被ばくするとガンになるようなイメージあるかもしれません

    ただ、下の図のように私たちは様々なガンの原因に囲まれて暮らしており、放射線よりもタバコや食事、生活習慣の方がガン発生により密接に関わっていることがわかります。

    国立がん研究センターの発表によれば、放射線の被ばく量が100ミリシーベルト未満では、発がんリスクを検出することが極めて難しいと考えられています。

    一方、下で詳しく説明をしますが、胸部のレントゲン写真を1回撮ると約0.06ミリシーベルト(mSv)の被ばくをするといわれています。

    つまりレントゲン検査を行ったくらいの被ばくでは発ガンへの影響はほとんどないといえるでしょう。そしてレントゲン検査による被ばくよりも、私たちの生活の中にこそ発がんリスクが潜んでいるといえるでしょう。

    妊婦さん、胎児、小児への影響

    次に、胎児や妊婦、小児への影響について説明します。

    妊婦さんがレントゲン検査を受ける場合、胎児への影響が気になるところです。実際には、腹部や骨盤のレントゲン検査ではなく、胸部や四肢のレントゲン検査であれば、胎児への影響はほとんどありません。

    また当クリニックでは必要に応じて防護具を使用し、被ばくを最小限に抑えるように工夫しています。例えば、妊婦さんが四肢のレントゲン検査を受ける場合、お腹の部分には鉛のエプロンをかけて、放射線が胎児に届かないようにします。

    このような防護によって、胎児への被ばく量はごくわずかになります。また腰痛などで、レントゲン撮影による胎児への被ばくを避けられないと判断した場合は、できるだけレントゲン撮影行わずに治療をおこなうように配慮します。特に、器官形成期を含む妊娠初期では極力レントゲン検査を避けています。

    そのため、妊婦さんや妊娠の可能性がある方は必ずお申し出ください。

    また小児に関しては、放射線感受性は大人よりも高いとされています。しかし身体が大人より小さいために検査に必要なX線量も少なく、皮膚表面線量が小さくなるので、X線による影響を過剰に心配する必要がないと考えられています

    当クリニックでは、小児に対するレントゲン検査でも同様にレントゲン検査の回数や被ばく量をなるべく減らすように努力をしています。

     

  3. 「レントゲン撮影による被ばく量はどれくらい?」

    被ばく量とは?

    被ばく量とは、体がどれだけの放射線を浴びたかを示す量のことです。

    放射線を浴びると聞くと、少し怖く感じるかもしれませんが、実は日常生活の中でも私たちは常に少しずつ放射線を浴びています。この放射線の量はとても少なく、通常は健康に影響を与えることはありません。

    胸部レントゲン検査の被ばく量

    レントゲン撮影によってどれくらいの放射線を浴びるのか、具体的な数字で説明してみましょう。例えば、胸部のレントゲン写真を1回撮ると、約0.06ミリシーベルト(mSv)という量の放射線を浴びます(5歳児であれば約0.02ミリシーベルト)。この「ミリシーベルト」という単位は、放射線の影響の大きさを示すものです。

    0.06ミリシーベルトという数字がどれくらいのものかピンと来ないかもしれませんが、これは普段の生活で浴びる自然放射線の約10日分に相当します。逆に言えば、胸部レントゲン写真撮影による被ばく量は、屋外で10日間過ごせば自然に浴びる量ということです。この量は、人体にほとんど影響を与えないレベルです。

    足や腕のレントゲン検査の被ばく量

    整形外科でよく撮影する足や腕の骨のレントゲン撮影では、被ばく量はさらに少なく、約0.01〜0.05ミリシーベルト程度です。これは、数日分の自然放射線を浴びるのと同じくらいの量です。

     

    骨粗しょう症の検査(DEXA法)の被ばく量 

    骨密度の検査による被ばく量は、胸部レントゲン写真撮影に伴う被ばく量の約1/5といわれています。

    検査の時間は数十秒と少し長いですが、安心して受けてください。

  4. 「自然放射線とは?私たちの身の回りにある放射線」

    自然放射線の正体

    放射線は私たちの身の回りに常に存在しています。このような自然界からの放射線を「自然放射線」と呼びます。自然放射線は、地球のどこにいても感じることはできませんが、確実に存在しています。私たちは、生まれたときからずっと自然放射線にさらされており、特に健康への影響なく生活をしています。

    自然放射線の種類

    自然放射線にはいくつかの種類があります。

    • 宇宙線

    宇宙線は、宇宙から地球に降りそそぐ高エネルギーの粒子で、地球の大気に当たると放射線が発生します。地球の表面にいると、宇宙線の放射線を少しだけ浴びています。

    • ラドンガス

    地球の地面や建物から発生する「ラドンガス」です。ラドンガスは、地中に存在する放射性物質が分解するときに放出されるガスで、これも放射線を含んでいます。私たちが吸い込む空気の中にも、わずかにラドンガスが含まれています。

    • 食物

    私たちが食べる食べ物や飲む水の中にも微量の放射線が含まれているということです。例えば、バナナにはカリウムという物質が含まれており、その中にごくわずかに放射性のカリウムもあります。これを食べることで、体の中に少しだけ放射線が入ることになりますが、その量はバナナ1本あたり約0.0001ミリシーベルトとごく微量であり健康に影響を与えるほどではありません。そのため、カリウムを摂取することを気にする必要はありません。逆にカリウムの値が低くなりすぎると、不整脈や筋力低下などの症状が引き起こされます。

     
  5. 「日常生活における自然放射線の被ばく量」

    日本での自然放射線被ばく量

    日本に住んでいる人が1年間に浴びる自然放射線の量は、だいたい2.1ミリシーベルト(mSv)です。この量は、日常生活を送っている中で意識することなく浴びている放射線の総量です。この自然放射線の量は、私たちが健康に影響を感じるようなものではなく、通常の生活の中で問題になることはありません。

    また、特定の温泉地や鉱泉では、地面から出る放射線が多く、自然放射線の量が少し高いことがありますが、それでも健康に悪影響を与えるほどではありません。

     
  6. 「飛行機に乗るとどれくらい被ばくするの?」 

    飛行機に乗ると被ばくする理由

    飛行機に乗ると、地上よりも放射線を多く浴びることになります。不思議に思うかもしれませんが、その理由は飛行機が非常に高いところを飛んでいるからです。

    地上では、地球の大気が宇宙からの放射線をある程度ブロックしてくれます。しかし、高い場所ではこの大気が薄くなるため、宇宙からの放射線が地上よりも多く届くのです。

    飛行機での被ばく量

    例えば、飛行機で東京からニューヨークまでの直行便に乗ったとしましょう。このフライトは通常約12〜13時間かかりますが、その往復で浴びる放射線の量は約0.1ミリシーベルト(mSv)です。この量は、胸部X線撮影の約2枚分に相当します。

     
  7. 「レントゲン撮影と日常生活の放射線を比較してみる」

    放射線量の比較

    • 胸部レントゲン撮影1回:約0.06ミリシーベルト(mSv)
    • 1年間の自然放射線(日本):約2.1ミリシーベルト(mSv)
    • 東京からニューヨークへの飛行機旅行(往復):約0.1ミリシーベルト(mSv)

    こうして比べてみると、胸部レントゲン撮影1回で受ける放射線の量が、日常生活で受ける放射線の一部に過ぎないことがわかります。飛行機での長距離フライトよりも少ない放射線量であることからも、レントゲン検査に対して過度に不安を感じなくてもよいといえるでしょう。

        
  8. 「当クリニックでの工夫:安全性を確保するために」

ここまでの説明で、レントゲン検査の被ばくによる健康への影響はほとんどないということは、少しご理解いただけたと思います。

ただ当クリニックを受診される患者さんの中には、首・肩・腰・膝などたくさんの部位の痛みを一度に訴える方も少なくありません。

すべての場所を確認するためには、レントゲン写真を何枚も撮影する必要があります。

当クリニックでは患者さんの安全を最優先に考えており、レントゲン撮影時に患者さんが浴びる放射線の量を最小限に抑えるために様々な工夫をしています。

被ばく量を少なくするための当クリニックでの工夫  

  1. 放射線を当てる部分(照射野)を狭くする
  2. 撮影時間を最小限に抑える
  3. 少ない放射線量で高品質な画像を撮影できるように設計された最新のセンサーを使用する
  4. 必要に応じて、鉛(放射線を遮る効果が極めて高い)でできたプロテクターを装着する

当クリニックでの撮影の手順と時間

通常、レントゲン撮影は非常に短時間で終わります。撮影そのものの時間はほとんどの部位で1枚0.3秒以内であり、体位の調節を含めても10秒から数分で完了し、結果がすぐに確認できることが多いです(混雑時はお待たせすることがあります)。

また撮影前に、姿勢や角度についての説明をいたしますので、安心してレントゲン検査を受けてください

  9.「そもそも、なぜレントゲン検査が必要なの?」その役割とメリット        

ただ、どんなに影響が少ないと言っても、レントゲン検査による被ばくはゼロにはなりません。そのため、レントゲン検査の役割、そしてメリットとデメリットを考慮して、メリットが大きいと判断される場合に検査を行うのが望ましいでしょう。

       レントゲン検査の目的とメリットデメリット

レントゲン撮影は、私たち医師が患者さんの体の状態を正確に診断するための大切なツールです。例えば、骨折の診断や肺の異常の確認、さらには歯科治療における歯の根の状態の確認など、様々な場面で利用されています。

当クリニックのような整形外科においてはレントゲン検査で確認できることは非常にたくさんありますが、主な目的は以下の通りです。

目的
  • 骨折の診断
  • 骨折の治癒の確認
  • 関節軟骨の摩耗の予想
  • 軟部組織の腫れ具合の把握
  • 神経の圧迫の予想
  • アライメントの確認
  • 関節の変形や破壊像の確認
  • 骨萎縮の確認
  • 解剖学的な異常の有無の確認
  • 動的な撮影による不安定性の確認 など
メリット
  • すぐに撮影ができる
  • 短時間で結果がわかる
  • 痛みがない
  • 結果を保存できる
  • 前回の結果と比較することで、経時的な変化が目で確認できる など
デメリット
  • かなり低い線量とはいえ被ばくをする
  • レントゲン装置がないと撮影ができない など

これらを複合的に考慮してメリットが上回ると判断した場合に、レントゲンの撮影をご提案します。

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いかがでしたか?

レントゲン検査に伴う被ばく量はかなり少なく、健康への影響はほとんどないと考えられます。ただわずかではありますが、レントゲン検査は被ばくを伴います。

そのため当院では、皆様により安心して検査を受けていただけるように多くの工夫を行っておりますので、安心して検査を受けていただければと思います。

正しい知識を知り、検査の目的やメリットとデメリットを考慮して、納得のいく検査を受けるようにしてください。

 

今回はいつもにもまして長文でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

当クリニックでは正しい情報を持ち、検査の重要性を理解していただくことで、みなさまの健康を守るための最善の選択ができるようにお手伝いしたいと考えております。

それではまた次のブログでお会いしましょう。

(なお今回使用した図表はすべて環境省のホームページよりお借りしております)

 

 

 

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